植物発生生物学研究室

植物発生の仕組みと進化を探る


伊藤 正樹 (教授)

 
高塚 大知(助教) 小藤 累美子(助教)

植物は私たちにとって必要不可欠な食料や燃料の源であり、葉の緑や花の美しさは生活に潤いをあたえてくれます。作物やバイオマス資源は植物生産によって作り出されていますが、その基礎には、植物の成長や発生を司る制御メカニズムが存在しています。葉や花などに代表されるような植物としての形を作る仕組みとはどのようなものでしょうか。また、どのような仕組みで適切な大きさにまで成長し、それ以上成長しなくなるのでしょうか。私たちの興味は、このような植物の形作りや成長のメカニズム、さらには多細胞体形成の基本原理を明らかにすることです。

植物の個体や器官の大きさは、細胞の数と大きさによって一義的に決定されているため、植物の成長は細胞増殖と細胞サイズの拡大(細胞成長)の2つによって決定づけられます。植物が適切な形作りをするためには、この細胞増殖と細胞成長が互いに関連し合い、時空間的に厳密な制御を受ける必要があります。細胞増殖は個々の細胞の細胞周期の調節によってコントロールされ、一方、細胞のサイズ制御は吸水による液胞の拡大や細胞当たりのDNA量(プロイディレベル)の増大によって説明されています。このような細胞レベルでの事象を制御するメカニズムを解明することができれば、多細胞体形成における基本機構の理解に資するだけでなく、細胞レベルで人為的に成長を操作することによる植物生産の効率化など、社会的にも貢献できる可能性があります。また、3Dバイオプリンターの技術を応用して植物細胞から任意の形状の構造体を作るための技術開発も行っており、この研究から物質生産能力の向上や基礎研究のための新しいツールの開発など画期的な成果が生まれる可能性があります。

植物の発生、成長を解明するためのもう1つの重要な鍵は、発生メカニズムを進化的な視点で捉えることです。私たちが日頃目にする植物は、4-5億年前までは陸上には存在しませんでした。コケ植物が陸上化に成功して以降の進化の過程で、花を咲かせる植物が誕生しました。植物の形作りの基本的なプランは、コケ植物の段階から備わっており、その仕組みを変化させたり、遺伝子自体や、その使い方を変えたりしながら、現在の被子植物の発生メカニズムが生じたと考えられています。ゲノム解読が完了し遺伝子導入などの技術が確立されたモデルコケ植物において、発生メカニズムを解明し、シロイヌナズナなどの被子植物と比較することで、発生的メカニズムの進化の様子や形態形成の原理について明らかにされることが期待されます。

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