いきもの紹介、再開しました!

生物学コースでは、動物、植物、原生生物、バクテリアといった、さまざまないきものを使って研究しています。このコーナーで順番に紹介していく予定です。

バックナンバー: トノサマガエル ヒメツリガネゴケ

「今月のいきもの」(2008〜2012年)はこちら。

 

クロユリ Fritillaria camtschatcensis (2015年3月13日掲載)

白山室堂で撮影したクロユリの写真

写真. クロユリの生育環境と両性花(白山室堂で撮影).

クロユリは石川県の県花で、白山では標高2000m以上の日当たりのよい草地に大きな群落があります。ユリ科の多年生草本で地下部は鱗茎です。実生は数年かけて成長・肥大し鱗茎がある大きさになると地上茎を出してその先端に花をつけます。クロユリは年によって花の性が変化します:最初は雄性花を付け、鱗茎がさらに大きくなると両性花を付けます。夏の終わりに白山でクロユリを観察すると、子房がふくらんだ花(両性花)と、しおれた花(雄性花)がよくわかります。クロユリは、有性繁殖(種子)と栄養繁殖(鱗茎葉の分離)の両方を行います。
 私たちは白山のクロユリ自生地に方形区を設置し、その中のクロユリ全個体を識別し、数年間にわたり、新規参入個体数、性表現、成長や繁殖、死亡に関して調査を行い、10年後あるいは50年後にこの集団がどうなるかを予測しました(Shimizu et al. 1998、畑中ら2008)。自生地では多量の種子生産をしているにもかかわらず実生はほとんどみられません。調査結果から、白山のクロユリは実生の新規参入がなくても栄養繁殖のみで集団が維持できる、との結論を得ました(Shimizu et al. 1998)。有性繁殖の役割は、集団の維持ではなく繁殖集団の遺伝的多様性の維持であると推測できます。またクロユリの種子には翼があり風散布種子であるため、分布の拡大の役割を担っています。(木下 栄一郎)


引用文献: Shimizu et al. 1998 Ecological Research 13(1), 27-39.
      畑中ら 2008 日本生態学会誌 58(3), 213-218.

 

 

ヒメツリガネゴケ Physcomitrella patens ssp. patens (2015年1月19日掲載)

ヒメツリガネゴケの写真

写真. ヒメツリガネゴケ. A ピートモスで培養したもの、B 寒天培地で培養したもの、C 茎葉体、D 葉.

石川県ではキノコのことを「こけ」とよびますが、ヒメツリガネゴケは正真正銘のコケ植物のほうで、スギゴケと同じセン類に属します。普段コケとして見ている緑色の部分は拡大すると茎と葉のような構造からなっており、茎葉体とよばれます(C)。コケ植物には維管束がないことが知られていますが、原始的な通導組織が存在し、茎の下から上、葉の根元から先端へと水を運びます。一層の細胞からなる葉にも中央には通導組織が存在しているのです(D)。コケ植物は高い再生能力を持ち、ばらばらに破砕して蒔くとそこからたくさんのコケが生えてきます。そのほかにも、冷蔵庫で1年間保存した後や、水中でも生育できるなど、様々な特長を持ちます。(小藤 累美子)

 

 

トノサマガエル Rana nigromaculata  (2015年1月8日掲載)

5種類のトノサマガエルの写真

写真. トノサマガエルの背中線の変異と分類:(a)直線型、(b) 分断型、(c) 肥大型、(d) 屈曲型、(e)消失型.

トノサマガエルは無尾目アカガエル科アカガエル属に属し、国内では本州、四国、九州に分布し、水田や池、河川、用水などに生息している。体長は40-90 mm程度で、雄は早春に水辺に縄張りを作り、鳴いて雌を誘引して繁殖を行う。卵は孵化後30-90日で変態、2-3年で成体となる。一般にも馴染みのあるカエルだが、その大きな特徴の一つに色彩や模様の変異があることは意外と知られていない。体色の地色や黒班模様、また背中線とよばれる背部の線の形状が雌雄間や地域間で大きく異なっている。2012年、生物学コース2年生だった寺下貴明君と鈴木隆介君はグループ演習の授業で、その形態的特徴を地域間で比較し、背面からみた緑色部の面積と背中線の形状によってその変異型を類型化した。特に背中線のパターンは5タイプに分けられた。この成果は日本爬虫両棲類学会誌(2014(1)号:1-9)に掲載されている。(大河原 恭祐)