公開セミナーのお知らせ

●公開セミナー  世話人:山口正晃(自然システム学系)内線6233

日 時:2015年9月11日(金) 16時30分から60分程度
場 所:自然科学本館(講義棟)2階 201講義室

演 題:神経幹細胞の自律的メカニズムとフィードバック制御による脳の発生
演 者:松崎文雄(理研 多細胞システム形成研究センター 非対称細胞分裂研究チームリーダー)

要 旨
脊椎動物の神経発生は、単純な神経上皮細胞のシートから出発し、複雑な神経ネットワークを形作るプロセスである。とりわけ哺乳類の大脳皮質では胎生期から新生期にかけて、神経回路の土台となる整然とした6層の神経細胞の階層構造が構築されるが、この驚くべき変貌の過程には、神経幹細胞のidentityの継時的変化が基本的な役割を果たしている。当初、等分裂を繰り返す神経上皮細胞は、神経幹細胞として神経細胞を生み出す非対称分裂モードに移り、その遺伝子発現を継時的に変化させながら、順次異なる神経細胞を生み出してゆく。そして、最終的にはグリア幹細胞へと変化してゆく。すなわち、脳の発生過程の基本プロセスは、神経幹細胞のidentityの継時的変化を、娘細胞の多様性と3次元構築に変換する過程と捉えることができる。我々のグループでは、発生脳の単一細胞ライブイメージングとトランスクリプトーム解析を中心に、この過程を制御するメカニズムをはじめとした脳の基本構造の形成原理の解明に取り組んできた。本セミナーでは、神経幹細胞のidentityの継時変化には自律的なメカニズムが存在する可能性を提示し、また、同時に神経細胞から幹細胞に作用するfeedbackシグナルが存在することを紹介する。このfeedbackシグナルは神経幹細胞の細いradial fiberを介して細胞体に伝えられ、幹細胞の増殖能を制御することで、神経細胞層間の比率を制御することが判明した。
 

 

●公開セミナー  福森義宏(理事・副学長)、田岡東(自然システム学系) 内線6234

日 時:2015年3月17日(火) 16時30分〜17時30分
場 所:自然科学本館3階301講義室

演題:微生物と電気
演者:渡邉一哉 先生(東京薬科大学生命科学部生命エネルギー工学研究室教授)

セミナーのチラシです

 

●シアノバクテリア特別セミナー  世話人:坂本 敏夫(理工研究域・自然システム学系) 内線:6227

本セミナーは、荒天により演者が到着できないため、キャンセルになりました。

日 時:2014年12月17日(水)14時45分~16時15分
場 所:金沢大学 自然研本館 202講義室

【講演1】
演題:Diversity and secondary metabolites of water bloom forming cyanobacteria.
演者:李 仁辉 教授(中国科学院・水生生物研究所)

李仁輝博士は、富栄養化した湖沼で発生するアオコの原因となる糸状性シアノバクテリアについて分類、多様性、系統地理分布、進化などについて研究されており,本講演ではご自身の最新研究成果について発表する。
 

【講演2】
演題:プランクトン食物網における微生物ループの生態学
演者:中野 伸一 教授(京都大学・生態学研究センター)

本講演では(1)微生物ループにおける原生生物の生態学的役割、(2)湖沼の富栄養化に起因して起こるシアノバクテリアのアオコを摂食する原生生物の生態、最新の興味深い知見として(3)夏季の琵琶湖の深水層における表水層での植物プランクトンによる有機物生産に始まり、細菌によるこれら有機物の難分解性溶存有機物への変換、クロロフレクサス門に属する細菌の優占、キネトプラスチド鞭毛虫の優占とつながる、湖沼深部に特有な微生物ループ存在の可能性について、発表する。

 

●公開セミナー  世話人:木矢 剛智(理工研究域・自然システム学系) 内線:6248

日 時:2013年11月22日(金)16時30分~17時30分
場 所:金沢大学 自然科学1号館 生物会議室(1B229)

演題:How to understand the Honeybee Dance Language Communication?
演者:Axel Brockmann博士 (National Centre for Biological Sciences - Tata Institute of Fundamental Research, Bangalore, India.)

要旨: Honeybee dance language is one of the most elaborated and fascinating insect behaviors. In the last years, several labs have started to study the neural and molecular mechanisms underlying dance language communication using anatomical, genomic, and peptidomic, strategies. We proposed the hypothesis that the capability to communicate spatial information is an elaboration of sun compass navigation; and the brain neuropils involved in sun compass orientation are highly likely involved in dance behavior. However, a major challenge is that we still do not know how the dance recruits perceive the dance information; a gap in our knowledge that has been used to question dance language communication. In my talk, I will present a review of the major behavioral findings, our approaches to study the neural and molecular underpinnings of dance behavior, and provide some new ideas on the evolution of dance behavior. The aim of my talk is to summarize the current state of honeybee dance research and formulate future research questions.

 

●公開セミナー 世話人:程 肇(理工研究域・自然システム学系) 内線:6228

日 時:2013年11月6日(水) 16時30分〜17時30分
場 所:自然科学系図書館棟 地下1階 G15会議室

演題:概日リズムによるmRNA poly(A)鎖長の制御
演者:小島 志保子 博士(Department of Neuroscience University of Texas Southwestern Medical Center)

要 旨
概日リズムは、細菌からヒトに至るほぼ全ての生物に存在し、特に ヒトにおいてはホルモン分泌・老化・睡眠等数多くの生理現象を 制御している。哺乳類時計遺伝子元年である1997年に緒を端した 分子生物学的解析の結果、2013年現在では、概日時計遺伝子及び それらの翻訳産物が形成する"転写・翻訳フィードバックループ" 機構が概日リズム発振のための基盤であることが広く認識されて いる。この分子時計によって産み出された転写リズムが元となり、 当該遺伝子産物がリズミックに発現され、これが体内の概日リズム 依存的生理現象を駆動していると考えてられている。しかし最近、 転写リズムとは独立に転写産物をリズミックに制御し、これを出力 系として用いる機構も複数存在することが明らかになりつつある。 その一つが、我々が最近明らかにしたPoly(A)鎖長を介した制御 機構である。Poly(A)鎖はmRNAの3'末端に付加される配列で、タン パク質翻訳効率やmRNA安定性に重要な役割を果たす。我々はPoly(A) 鎖長の変化に対する概日リズムの直接的な影響を観察するために、 各々の遺伝子のPoly(A)鎖長を網羅的に解析する手法 (Poly(A)denylome法)をまず開発し、これを用いてマウス肝臓に おいて発現している遺伝子のうち約2.3%のmRNAのPoly(A)鎖が 概日リズム依存的に長短することを明らかにした。さらに、poly(A) 鎖長が概日振動を示す遺伝子は、mRNAの発現振動の有無に関わらず、 そのタンパク質発現が概日振動を示すことより、概日時計による遺伝子 発現制御は、転写のみならず、poly(A) 鎖長の変化に代表される転写 後制御機構をも用いていることを明らかにした。このように概日リズムは 複数の独立した出力機序を用いることによってその発振機能をより堅固に 保っているものと推測される。現代社会には、夜間の人工光、慢性的 睡眠不足、海外旅行による時差ぼけ等概日リズムを破綻しうる因子が 無数に存在する。概日リズムがヒトの健康に与える影響の大きさを 鑑みると、概日リズム発振・出力制御機構の解明は、我々の健康を 維持し、また生活の質を高めるのに必要不可欠な課題である。

 

●公開セミナー 世話人:程 肇(理工研究域・自然システム学系) 内線:6228

日 時:2013年6月3日(月) 16時30分~17時30分
場 所:自然科学講義棟 1階 104号室

演題: As Time Glows By: Circadian Clocks from Populations to Molecules
演者: Carl Hirschie Johnson 教授(Vanderbilt University)

要 旨
The study of the circadian clock system in the cyanobacterium Synechococcus elongatus PCC 7942 began in 1992 as a collaboration among the laboratories of Takao Kondo, Susan Golden, Masahiro Ishiura, and myself. Since that time, tremendous strides have been accomplished in our understanding of this clock system that I believe have important implications for eukaryotic clocks as well. For example, the cyanobacterial system was used for the first rigorous tests of the adaptive significance of circadian clocks. Moreover, the cyanobacterial clock proteins KaiA, KaiB, and KaiC were the first to have their crystal structures solved (and remain the only clock proteins for which we have full-length structures). Most remarkable was the first demonstration of a biochemical post-translational oscillator from Takao Kondo's laboratory. While it is commonly said that the cyanobacterial system does not reflect circadian organization in eukaryotes???largely because the central clock proteins KaiA, KaiB, and KaiC do not have homologs among the eukaryotic clock genes???I believe that in a more fundamental sense, eukaryotic clock systems may be organized very similarly to the cyanobacterial system. I will discuss our current understanding of the cyanobacterial clock system and the evidence that animal clock systems may be organized in a similar way.

Reference: Nature 495, 116-120 (2013).

 

●公開セミナー 世話人:程 肇(理工研究域・自然システム学系) 内線:6228

日 時:2012年9月20日(木) 16時00分~18時00分
場 所:自然科学研究棟 1号館 B棟 2階 229号室 生物会議室

演題: 概日転写制御機構とシストローム、エピゲノム
演者: 小池 宣也 博士(Department of Neuroscience, The University of Texas Southwestern Medical Center)

要 旨
哺乳類概日時計は時計遺伝子の転写翻訳を介したフィードバックループによ り構成されている。最も中心となるフィードバックループでは、bHLH-PASタ ンパク質であるCLOCK及びBMAL1がPeriod及びCryptochrome遺伝子の転写を活 性化する。そこから作られたPeriod (PER1, PER2) 及びCryptochrome (CRY1, CRY2) タンパク質がCLOCK, BMAL1タンパク質との相互作用によって、自らの 転写を抑制するというネガティブフィードバックを形成している。今回我々 は、次世代シーケンサーを用いたChIP-seq及びRNA-seq法によって、マウス 肝臓の概日シストローム、トランスクリプトーム、エピゲノム解析を行った。 コアフィードバックループを形成するBMAL1, CLOCK, NPAS2, PER1, PER2, CRY1, CRY2タンパク質及びRNApolymerase IIのDNA結合にはゲノムワイドな 概日リズムが存在し、概日転写サイクルには3つのステージ(転写待機期、 転写活性化期、転写抑制期)が観察された。興味深いことに、mRNAが振動す る遺伝子のうち新生RNAのリズムが観察されたのは約22%だった。このことは、 スプライシングやRNAの分解といった転写後制御のリズムがmRNAの振動に大き く貢献していることを示していた。さらには、クロマチン修飾にもゲノムワ イドなリズムが存在し、概日発現する遺伝子だけでなく、構成的発現の遺伝 子においても、ヒストン修飾の概日制御を受けていた。

 

●公開セミナー 世話人:程 肇(理工研究域・自然システム学系) 内線:6228

日 時: 2012年8月7日(火) 16時30分~18時00分
場 所: 自然科学本館 1階 103講義室(変更になりました)

演題: 記憶が長期間・正確に保存される仕組みの分子・細胞メカニズム
演者: 鎌倉 井ノ口 馨 教授(富山大学・大学院医学薬学研究部・医学部生化学講座)

要 旨
本セミナーでは動物モデルを用いた記憶形成に関する私たちの研究のうち 2つを紹介します。

1.長期間保存されるメカニズム
記憶獲得後、ある種の記憶の想起は、最初は海馬の働きを必要とするが、時間経過に伴い徐々にその海馬依存性が減少する。しかし、どのような仕組みで記憶が海馬依存的な状態から海馬非依存的な状態へとなるのかについては、これまで分かっていなかった。私たちは、海馬における継続的な神経新生の程度に依存して、恐怖記憶が海馬依存的な状態から非依存的な状態へと移行する速度が抑制されたり、逆に加速されたりすることを明らかにした(ref., Cell, 139, 814, 2009; Curr Opinion Neurobiol, 21, 360, 2011など)。

2.正確に保存されるメカニズム
長期間保存される記憶では、その記憶に対応する特定のシナプスに細胞体から記憶関連たんぱく質が配達されることでそのシナプスの働きの変化が持続し、記憶が正しく長期間保存されると考えられる。ところが、どのような仕組みで特定のシナプスのみに記憶関連たんぱく質を配達し、働かせているのかは分かっていなかった。私たちは、記憶関連たんぱく質Vesl -1Sの挙動を解析した結果、記憶関連たんぱく質は細胞内全てに配達された後、その時に使用されていたシナプスだけに取り込まれることを明らかにし、シナプスタグ仮説が正しいことを実証した(ref., Science, 324, 904, 2009; Mol Brain, 5, 5, 2012など)。

 

●公開セミナー 世話人:程 肇

日 時: 2012年6月15日(水) 16時~17時
場 所: 自然科学本館 1階 101講義室

演題: ミツバチの女王蜂分化誘導因子ロイヤラクチンの発見
演者: 鎌倉 昌樹 講師(富山県立大学・工学部生物工学科/生物工学研究センター)

要 旨
ミツバチは女王蜂と働き蜂からなる階級社会(カースト)を形成しており、幼虫の間に働き蜂が分泌するローヤルゼリー(RJ)を摂取した個体のみが女王蜂へと分化している。これまでにこの女王蜂への分化のしくみについてはまったく明らかになっていなかった。そこで、本研究においてミツバチの女王蜂分化誘導機構を解析した結果、RJ中に含まれる成分「ロイヤラクチン」が女王蜂の分化を誘導する因子であることを明らかにした。さらに、驚くべきことにロイヤラクチンをショウジョウバエに投与或いは過剰発現させた場合にも、女王蜂と同じような体サイズ、産卵数、寿命の増加が見られた。ショウジョウバエ及びミツバチを用いた詳細な解析から、ロイヤラクチンは上皮増殖因子受容体(EGFR)シグナルを活性化し、女王蜂分化を誘導していることが明らかとなった。これらの結果は、ロイヤラクチンがミツバチだけなく種を超えてハエにまで作用する因子であり、同じ遺伝子型をもつ個体を全く異なる表現型をもつ個体へと誘導するエピジェネティックな因子であることを示しており、ミツバチのように生育環境が形質を変化させるという現象が生物に普遍に存在することを強く示唆している。本講演では、ロイヤラクチンの生理的機能だけでなく、ロイヤラクチン発見までの経緯やこれまでの他のミツバチのカースト分化に関する研究との関連性も含め詳しく解説する。


●生態研セミナー 世話人:都野 展子

最近、石川県立大に移られた柳井先生と、この春筑波大で博士号会得後、小松博物館キュレーターに赴任してこられた糟谷先生に
キノコ関係話題を提供して頂きます。

日時:2012年6月6日(水) 17時半〜
場所:金沢大学角間キャンパス自然研1号館B棟2階生物会議室

演題と話題提供者:

鹿島の森における陸カニ類を介した森林から海への物質循環
石川県立大学 柳井清治

Taxonomic Study on the Geastrum triplex Complex Inferred from
Morphology and Molecular Phylogeny
(形態と分子系統に基づくエリマキツチグリ複合種の分類学的研究)
糟谷 大河

要旨はこちらから(pdfファイルです)

大学へのアクセス
http://www.kanazawa-u.ac.jp/university/access/index.html
キャンパスマップ
http://www.kanazawa-u.ac.jp/university/access/images/kakuma2.pdf

 

●理学談話会「ビールとパンと科学」 世話人:程 肇、小藤 累美子

日時:2012年2月10日(月)13:30〜
場所:自然科学5号館大会議室

講師:小倉 明彦 先生(大阪大学大学院生命機能研究科・教授)


●公開セミナー 世話人:程 肇

Menaker教授は、概日リズム研究において先駆的な発見を次々と成し遂げられた時間生物学分野を代表する研究者です。その業績には、哺乳類初の時計遺伝子変異体tau (CKIe遺伝子)の単離、SCN(視交叉上核)の移植実験による時計中枢機能の同定、網膜(入力側組織)概日リズム発振の発見など輝かしいものばかりで、大学生向け生物学の教科書にも必ず紹介されています。驚くべきことは約半世紀にも及ぶ精力的な研究生活を現在も継続していることです。その間自身の研究に尽くされたばかりでなく、後にこの分野の発展を導くことになる多くの卓越したリズム研究者を育ててこられました。この度金沢大学重点研究経費(海外共同研究)に基づき、本学においでになる機会を利用しセミナーをお願いいたしました。

(講演の案内):
Title: Who is conducting the circadian orchestra?

日 時  2011年3月9日(水) 16時~17時

場 所  自然科学1号館B棟229号室 生物会議室

講 師  Michael Menaker 教授
    (Virginia University)

要 旨
The circadian system of mammals consists of many separate circadian oscillators both in the central nervous system and in peripheral organs. In fact, it is probable that most cells in the body have the capacity to produce circadian oscillations although they may not express it. In order to function adaptively these separate oscillators must be synchronized with each other and with the environment. A great deal of very strong evidence supports the view that these synchronizing functions reside in a hypothalamic structure—the suprachiasmatic nucleus (SCN). I will briefly review this evidence. On the other hand, it is also clear that synchronization can be accomplished in the absence of the SCN, by timed bouts of restricted feeding and by chronic application of the drug methamphetamine. These data imply the existence of extra SCN oscillators that can function at the top of the system hierarchy. I will discuss what we know (and especially what we don’t know) about th
em.

 

●公開セミナー 世話人:都野 展子

3月4日金曜日 2階会議室 16:00 -17:00
We call a seminar on March 4th at 16:00PM at the meeting room presented by Dr. Kjaerandsen

JSPS短期招聘研究者の枠で来日中のルンド大学のDr.Kjaerandsenに透明な羽にみられる構造色について話してもらいます。
構造色の色は翅の厚みによって決まっており、幼虫期の栄養状態により昆虫の体サイズおよび翅サイズはバリエーションをみせますが、翅の厚さは安定した形質で種を特徴づけるキーとして構造色は利用できます。翅の厚さを指定する遺伝子については探索されていないようなので、いろいろな研究に発展する可能性があります。

お忙しい時期ではありますが、ぜひご参加ください。
希望者には、どのように観察するか実習を行う予定です。

There is info of the seminar below,

The iWing keynote - illuminating 250 million years of sparkling evolution

Jostein Kjaerandsen & Ekaterina Shevtsova, Department of Biology, Lund University, Sweden

You can find the paper here
http://www.pnas.org/content/early/2010/12/27/1017393108.full.pdf+html
Attached are two of the plates from the publication.

Diptera plate: Diversity of structural wing colours throughout the order Diptera. The left row shows lower flies "Nematocera", the middle row shows lower Brachycera flies while the right row shows Acalyptrate flies.
Figure 3: Three species in a species complex of tiny parasitic wasps (genus Achrysocharoides) displaying distinct differences in male wings (above line) while the females are similar. This indicates that sexual selection may be involved as one of the driving forces for the evolution of these patterns.

Abstract:
The thin transparent wing membrane in small insects may appear to have a simple structural design, but hides a largely unexplored extremely complex system of microstructured signalling channels and aerodynamics refined over some 250 million years of evolution. We have found that these extremely thin wings reflect stable structural colour patterns caused by thin film interference. We call them Wing Interference Patterns (WIPs) and the type of wings that display them iWings ("i" for intelligent, insect, interference and iridescence). The iWing is highly microstructured by membrane corrugations and spherical cell structures that serve aerodynamic purposes and give functional strength to the thin membrane. The optically refracted WIP is stabilized by the very same microstructures that reinforce the pattern and make it essentially non-iridescent over a large range of light incidences. Taxon-specific colour patterns are then formed by uneven membrane thickness, pigmentation, venation and chaetotaxy. The specific colour sequence displayed lacks pure red and matches the colour vision of most insects, strongly suggesting that the biological significance of WIPs and iWings lies in visual signalling as much as in flight optimization. WIPs can be used to map the micromorphology of wings through direct observation and are useful in several fields of biology. We have established their use as promising new taxonomic traits for systematic studies and see high potentials for their use in animal behaviour and communication studies with direct links to better understanding of wing morphogentics, mating systems, colour vision and micro-wing aerodynamics (with associated industrial potentials) in insects. Potentials for research on the genetic control of wing development are indicated through direct links between the trans-regulatory wing landscape and interference patterns we observe in Drosophila model species. Some species display sexually dimorphic patterns, indicating sexual selection as one of the driving forces for the evolution of these patterns.

 

●理学談話会「生命の起源と宇宙での生命実験」 世話人:岩見 雅史、福森 義宏、小藤 累美子

日時:2011年2月14日(月)13:30〜15:30
場所:自然科学図書館棟大会議室

講演1:鈴木信雄 先生(環日本海環境研究センター)
   「宇宙で生命を研究する」
   13時30分~14時30分

講演2:大島泰郎 先生(東工大名誉教授、共和化工(株)環境微生物学研究所)
   「生命の起源と生命の定義」
   14時30分~15時30分

*終了後、15〜30分程度講師の先生方との談話を予定しています。

 

●特別講演会 世話人:東 浩

日時:2010年12月21日(火)10:30〜12:00
場所:自然科学講義棟1階ワークショップ1

演題:寿命の起源をさぐる
演者:高木 由臣 先生(奈良女子大学名誉教授)

「寿命」の定義の曖昧さを正すことから、「生物は何故寿命を持つのか?」という問いに対し「有性生殖を行うから」という答えが導かれる。しかし「なぜ有性生殖を行うのか?」という問いに対する答えは簡単ではない。有性生殖の意味を「性分化を介してのゲノムの多様化」とみなす一般的な見解は、ゾウリムシ研究者の立場からは受け入れ難いからである。その矛盾の解消を目指す中で、有性生殖と寿命との関係、真核生物出現当初の有性生殖のかたち、原核生物から真核生物への進化などについて考えてきた。その思索の経緯と、そこから結論された生命システムを抑制系と見る生命観について語る。

 

●公開セミナー2件 世話人:程 肇

【セミナー1】

日時: 2010年9月29日(水) 17時〜18時
場所: 自然科学本館 1階 107講義室

演題: ゲノムインプリンティング、生殖細胞のエピゲノムと小分子RNA
講師: 佐々木 裕之 教授(九州大学・生体防御医学研究所エピゲノム学分野)

要旨:
 ゲノムインプリンティングは特定の遺伝子の母由来または父由来コピー特異的な発現を引き起こすエピジェネティックな現象で、哺乳類の胚成長、胎盤形成、行動などに重大な影響を及ぼす。その分子的な実体は雌雄の配偶子形成過程で刷り込まれるDNAメチル化の差であり、これは世代毎に確立と消去を繰り返すので、生殖細胞のリプログラミングを研究するよいモデルである。
 しかしながら、そもそもどのような仕組みで特定の標的が配偶子特異的なメチル化を受けるのか分かっていない。最近我々はマウスのプロ精原細胞において piRNAのシステムがあるインプリント遺伝子のメチル化に関わることを見つけた。モデルを提示してpiRNAがどのようにしてメチル化の特異性を生み出すのか議論する。
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【セミナー2】

日時: 2010年9月30日(木) 17時〜18時
場所: 自然科学本館 1階 103講義室

演題: Xist RNA作用機序の理解へ向けた試み
講師: 佐渡 敬 准教授(九州大学・生体防御医学研究所エピゲノム学分野)

要旨:
 哺乳類のメスでは胚発生初期に機能性noncoding RNAであるXistが,一方のX染色体のほぼ全域にわたって結合することでこれを不活性化し,オスとの間にある X染色体連鎖遺伝子量の差を補償している。遺伝子改変操作によって,XistはX染色体不活性化に必須な遺伝子で,この機能を阻害したX染色体は決して不活性化しないことが示されている。
 しかしながら,これまでに作製された改変アリルのいずれもがX染色体不活性化の開始自体を阻害するものであったため,その転写産物であるnoncoding RNAがどのようにして染色体ワイドの不活性化を引き起こすのか,については依然不明である。
 ところが,我々がこれまでに作製してきたXist改変アリルの一つが不活性化のプロセスを開始することは出来るものの,その後安定な不活性状態を確立できないことがわかってきた。これまでに報告のないこのような部分的機能欠損アリルは,Xist RNAの作用機序を知るための手がかりになると期待される。この改変アリルを持つマウス胚の詳細な解析とこれがもたらすX染色体不活性化の異常を中心に,Xist RNAの作用機序を理解するため我々が行っている最近の取り組みについて紹介する。
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●公開セミナー 世話人:中村 浩二

日時:2010年9月22日(水)16:00開始
場所:生物学科会議室(自然研1号館B229号室)

スケジュール等詳細はこちら(pdf)

 

●公開セミナー 世話人:程 肇

日時:2010年6月18日(金)17:00-18:00
場所:自然科学系図書館棟1階 大会議室

演題:性行動の神経機構 〜ショウジョウバエ行動遺伝学の今〜
演者:山元 大輔 教授(東北大学・大学院生命科学研究科生命機能科学専攻)

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講演要旨:

 キイロショウジョウバエを実験材料とすることにより、遺伝学的手法に依拠した性行動制御機構の解明が可能になる。
 例えばMARCMと呼ばれる体細胞染色体組換えを利用したモザイク作製法を使うと、雌の脳内の一個〜数十個の細胞だけを突然変異tra[1]によって雄化することが可能である。この方法によって、P1と命名した雄特異的介在ニューロンを雌の脳内に作り出したところ、その雌が雄の性行動をとった。雄のP1ニューロン限定的に高温感受性dTrpA1チャンネルを発現させ、温度シフトによってこのニューロン群を強制的に活性化させたところ、求愛対象がいない状態で、その雄は性行動を示した。さらに雄を拘束条件下に置いて性行動とらせ、Ca[2+]imagingによって脳の活動を記録する実験により、P1ニューロンが雌の接触に対して興奮応答を示すことがわかった。
 これらの結果からP1ニューロンは性行動を司令する中枢を構成すると考えられる。

●公開セミナー 世話人:程 肇

日時:2010年5月28日(金)17:00-18:00
場所:自然科学1号館2階Bブロック 生物会議室(1B229)

演題:エピゲノムを探る 〜 次世代シーケンサによるメチローム解析 〜
演者:伊藤 隆司 教授(東京大学・大学院理学系研究科生物化学専攻)

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講演要旨:

 ゲノム全体のエピジェネティク修飾状態を解明するエピゲノム解析が大きな注目を集めている。DNAメチル化の全貌を探るメチローム解析はエピゲノム解析の柱であり、その究極が次世代シーケンサを用いてシトシンのメチル化状態をゲノムワイドに1塩基解像度で解明する全ゲノム・バイサルファイト・シーケンシングである。
 我々も数年前からこれに取り組み、開発モデルに用いたアカパンカビのメチル化に関する新しい法則を見出し、その有効性を実証してきた。
 しかし、現行法はいずれもマイクログラム量のDNAを必要とする上に、PCR等のグローバル増幅操作を含む。したがって、初期胚等の微量試料への適用は困難で、量の少なさを補うために増幅を重ねると正確性が失われる。
 最近、我々は発想の転換でナノグラム量のDNAからグローバル増幅なしで解析を行う独自の方法を開発した。
 本セミナーでは、エピゲノム解析の強力なツールとなるこの技術を中心にメチローム解析への我々の取り組みを紹介するとともに、次世代シーケンシングのその他の応用についても触れてみたい。

●特別講演会 世話人:笹山雄一

日時:2009年12月25日(金)13:00より
場所:自然科学講義棟206号室

演題:ホヤの特異な金属濃縮機能を追って
演者:道端 齊 先生(広島大学大学院理学研究科)

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●講演会 世話人:岩見雅史

日時:2009年4月23日(木)16:30-18:00
場所:自然科学本館206講義室

演題:ゲノム時間生物学−遺伝子と行動の関係を探る−
演者:程 肇 先生(金沢大学理工学域自然システム学系生物学コース 教授)

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程教授は、大学院時代に大腸菌の分子遺伝学、博士研究員着任(当時のボスはショウジョウバエ神経行動学の現東北大学大学院生命科学研究科の山元大輔教授)からは動物の概日リズムの研究を開始、哺乳類時計遺伝子 per1 の発見など多くの重要な研究結果を残されました。先生は、三菱化成生命科学研究所、東大医科研助手、助教授時代を通して一貫して哺乳類の概日時計発信機構を分子レベルで解析、多数の概日時計に関する遺伝子の単離と解析を成し遂げて、Nature、Science、Cell、全米科学アカデミー紀要等、超一流誌に発表されています。

これまでの主な研究は、哺乳類時計遺伝子であるper1 の発見とその機能解析、哺乳類per1 遺伝子の発現制御機構の解析、分子マーカーを用いた個体及び細胞レベルでの概日リズム測定系の樹立、発現概日リズムを示す遺伝子の動的反応性の解析など多岐にわたっており、いずれも高い評価を受けておられます。

時間生物学は脳科学、神経科学、分子生物学、生理学、行動学を統合的に組み上げたもので、基礎生物学分野において大きな学術的意義をもつものです。また、時間生物学は、例えば、海外渡航時の時差ぼけ、昼夜交代勤務やうつ病に伴う睡眠障害等の診断や治療法の開発と密接な関連を持っています。このことから時間生物学は、基礎生物学分野にとどまらず、研究成果は広く医学的にも利用可能なものです。

 

●講演会 世話人:福森義宏

日時:2008年12月2日(火)15:00-16:30
場所:自然研図書館棟1階大会議室

演題:植物バイオテクノロジーの基礎から農業と水の問題へ
演者:山田 康之 先生(元奈良先端科学技術大学院大学長)

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●特別講演会 世話人:小藤累美子

日時:2008年8月5日(火)15:00-16:00
場所:自然研棟大講義室B

演題:微小管枝分かれは植物の細胞分裂に働く
演者:村田 隆 先生(基礎生物学研究所 生物進化研究部門 准教授)

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●第4回 生物科学セミナー 世話人:坂本敏夫、山田敏弘

日時:7月27日(金)16:30-18:00
場所:107講義室

演題:磁性細菌の磁気オルガネラ“マグネトソーム”の微細構造とタンパク質局在
演者:田岡 東(自然科学研究科・生物科学専攻)

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講演要旨:

磁性細菌Magnetospirillum magnetotacticumは細胞内にマグネトソームと呼ばれる単結晶磁鉄鉱(Fe3O4)を直鎖状に配列した細胞内構造(磁気オルガネラ)を有している。マグネトソームには磁性細菌に特有な一群のタンパク質(Mam)が局在しており、磁鉄鉱のバイオミネラリゼーションやマグネトソームの構造形成、維持などに関わっていると考えられている。しかし、それぞれのタンパク質の機能や、マグネトソームへの輸送のメカニズムは全く分かっていない。昨年、クライオ電子顕微鏡を用いた観察により、細胞骨格様の構造が細胞内のマグネトソームに沿って存在していることが報告された。また、我々は、マグネトソームは磁鉄鉱結晶、磁鉄鉱を被う膜、マグネトソーム間物質、マトリックスより構成される複雑な構造物であることを明らかにした。Mamタンパク質がマグネトソーム中のどの部位に存在しているかを明らかにする事は、これらのタンパク質の機能や輸送メカニズムを解明する為に重要である。そこで、本研究では、マグネトソーム中に多量に存在するTPRモチーフを持つ可溶性タンパク質Mam22、膜タンパク質であるMam12、アクチン様タンパク質MamKの3つのマグネトソーム局在タンパク質の細胞内、マグネトソーム内分布を免疫蛍光法、金コロイドを用いた免疫電子顕微鏡法を用いて明らかにした。その結果、Mam22はマグネトソーム鎖の外側を包む構造であるマグネトソームマトリックスに、Mam12は磁鉄鉱結晶を覆っているマグネトソーム膜にそれぞれ局在していることが分かった。また、MamKは細胞内でマグネトソーム鎖に沿った細胞極間を結ぶ直線状に分布していることを明らかにした。本研究では原核生物の“オルガネラ”であるマグネトソーム内におけるタンパク質局在を初めて報告した。

●第3回 生物科学セミナー 世話人:坂本敏夫、山田敏弘

日時:6月22日(金)16:30-18:00
場所:107講義室

演題:種子と果実をめぐるアリと植物の共生関係について
演者:大河原恭祐(自然科学研究科・生物科学専攻・生態学研究室)
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講演要旨:

社会性昆虫であるアリは植物と高頻度で共生的関係を結んでおり、特に植物の種子や果実をめぐる関係には多様な関係が見られる。雑食性のアリ類は地表で採餌し、植物の種子を集め、餌資源として普通に利用している。しかし、種子とアリとの間には、こうした採餌行動を通じた単なる補食—被食関係から、さらに複雑な関係が展開している。その代表的な関係がアリによる種子散布(アリ散布)である。動けない植物にとって花粉や種子の分散は子孫を残すのに重要な生活史戦略である。植物の中にはアリに種子の分散を依存する種(アリ散布植物)があり、日本国内でも200種以上が知られている。その種子にはアリを誘引し、餌となるエライオソームと呼ばれる特殊器官が備えられ、アリはこのエライオソームを介した栄養分を、植物は種子の散布を利益として相互に交換しあっている。このアリ散布の進化過程や、その適応的意義については様々な検証実験も行われてきている。

 またアリによる種子への採餌行動は、他の植物種も含めるとさらに複雑な様相を見せる。アリが利用するのは地表に落ちている種子だけではなく、繊維質の果肉を伴った果実(液果)も餌として利用する。本来、こうした液果は被食型散布において、鳥や哺乳類を散布者の対象として進化してきた形態的特徴である。しかし、鳥や哺乳類が採餌の過程で地表に落とした果実はアリによって餌として利用され、そこに新たな相互関係が展開している。熱帯雨林では地表に落ちた大型果実にアリが群がり、表面の果肉部がきれいに取り除かれることによって、その種子はカビや雑菌の感染から逃れている(クリーニング行動)。この効果は種子の死亡率を下げるという点で植物に利益をもたらしている。

 本発表では、このような種子散布から果実への効果についての調査、実験結果を報告し、アリと植物間の種子や果実を介した多様な相互関係とその進化的意義について紹介する。

第2回 生物科学セミナー 世話人:坂本敏夫、山田敏弘

日時:5月25日(金)16:30-18:00
場所:107講義室

演題:ウニ小割球特異化と中胚葉形成の分子機構
演者:山口 正晃 金沢大学自然科学研究科(理学部生物学科) 進化発生学研究室 准教授
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講演要旨:

動物卵は母性的に定められた軸をもち、胚はそれにもとづいて三胚葉を特異化する。ウニ卵の動物-植物軸は16細胞期に外面にあらわれる。動物極の中割球は外胚葉となり、大割球は原腸である内胚葉とその先端から生じる中胚葉性の二次間充織細胞(SMC)をつくる。一方、植物極に形成される小割球は、自律的に骨片形成細胞へと分化するだけでなく、胚の形成中心としてはたらく。たとえば、外胚葉しか生じない動物半球( 中割球)と小割球を再構成すると、小割球は動物半球から内胚葉とSMCを誘導し、キメラ胚は小さいが完全な幼生となる。 小割球の特異化(分化と誘導能)に核β-cateninが必須である。小割球での核β-cateninの標的遺伝子としてmicro1とKrüppel-like(Krl)が同定されている。micro1は新規のホメオボックス遺伝子で、小割球で一過的に活性化される。一方、Krlはzinc-fingerモチ-フをもつ転写因子をコードし、小割球だけでなく大割球の子孫細胞でも発現する。私たちはバフンウニ受精卵にmicro1mRNAを注入し、その胚の1 つの中割球を正常胚の動物半球と再構成することによって、小割球の分化と内胚葉誘導能はmicro1で十分であるが、micro1だけでは小割球のSMC誘導能を説明できないことを示した。一方、Krlをノックダウンした胚の小割球と動物半球を再構成したキメラ胚の表現型解析から、Krlが小割球のSMC誘導能を担っていることを明らかにした。これは、micro1とKrlの共発現が小割球を特異化することを示唆している。大割球でのKrlの機能を調べるため、正常胚とKrlをノックダウンした胚の割球を再構成したキメラ胚の表現型を解析した。その結果、大割球の内中胚葉前特異化にKrlが必要であること、大割球のSMC形成には2 つの異なる径路、Krl依存的と非依存的径路、が存在することが明らかになった。これらの観察に基づいて、棘皮動物における中胚葉形成の分子機構の進化について考察する。

●第1回 生物科学セミナー 世話人:坂本敏夫、山田敏弘

日時:4月27日(金)16:30-18:00
場所:107講義室

演題:疾病媒介蚊の吸血宿主選好性決定機構の解明
演者:都野 展子(生態学研究室 准教授 4/1着任)
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演題要旨:

現在進行中の研究についてお話させていただきます。

私は博士論文はキノコ食性昆虫を研究し、キノコ食性昆虫が繁殖場所または摂 食対象となる菌種を決定する際に、菌に対する嗜好性に加えキノコの離散した 空間分布特性が種間競争を和らげる仕組みについて群集生態学の分野で発表し てきました(Takahashi et al. 2005ab, Toda et al. 1999, Tuno 1998, 1999, 2001)。
このような経験を活かし、長崎大学熱帯医学研究所に奉職して以降は複雑な要 因が絡み合って実現する蚊の吸血行動に着目し、主に日本脳炎蚊を材料に研究 してきました。
蚊の吸血嗜好は生存率とともにベクター種の疾病媒介能力を決める重要な要因 であり、遺伝的、生態的な要因が影響します。東南アジアで日本脳炎媒介蚊 Culex vishnui species groupの吸血嗜好性について調査した結果、次のよう な ファクターが吸血行動に絡むことを突きとめた:吸血経験(前吸血したこ との ある動物から再度吸血する傾向がある)(Mwandawiro et al. 1999, 2000)あ るいは吸血対象動物の周りの蚊密度(密度依存的吸血成功 Tuno et al. 2003)あるいは被吸血動物の空間的分布、すなわち周囲にいる動物の 種類と量 にヒトの吸血リスクが影響される(Hasegawa et al. unpublished data)。こ のような現象は野外で実証された新知見です。

アフリカのマラリアベクターであるA. gambiae、 A. arabiensis、 A.funestusに関しては遺伝的環境的要因のうち、こと遺伝的要因に関してはア フリカ大陸全般にわたり調べられているのに対し、生態的情報についての広範 囲なデータは散発的で比較可能なものがありません。簡単なPCRによる種の同 定 が90年代以降に確立されたため、それ以前の生態学的データは広義のA. gambiaeあるいはA.funestusであり、種としてのデータとして使えないものも 多 いためでしょう。このためアフリカマラリア媒介蚊の吸血行動を統一手法 で東 西にわたり調査することは大きな意義があります。

サハラ以南アフリカにおける主要なマラリアベクターはガンビエハマダラカ姉 妹種6種のうちの2種A. gambiaeおよびA. arabiensisです。これまでの研究で は この2種の吸血嗜好性には地域変異が存在し、セネガルなど西アフリカから の報 告では2種とも6割程度のヒトからの吸血率(Human blood index, HBI) を示す 一方、東アフリカ、ケニアではHBIの値はA. gambiaeで0.99,A. arabiensisで 0.6と前種の人嗜好性が高いことが報告されている。吸血の起こ る場所は東アフ リカではA. gambiaeは人家に侵入し吸血(屋内吸血)、 A. arabiensisは屋外 吸血性が強いものと考えられているのに対し、西アフリカ からは2種とも屋外吸 血を行い、室内で休止することが報告されている。この ような違いが何に起因 するのか調べることは、マラリア対策に直結する知見 を得られるものと期待できる。

インタラクションセミナー4月 世話人:笠木哲也

日時:4月16日(月)17時30分〜
場所:自然科学1号館B棟 生物会議室

演題:『マラリア媒介蚊幼虫の生態とマラリアアウトブレークの関係』
発表者:都野展子(金沢大)

アフリカでいうハイランドマラリアとは, 従来冷涼な気候がマラリア媒介蚊や寄生虫の生息に適さずマラリアフリーであった標高1500m以上の高地で起こるマラリアのアウトブレークをさす. 地球温暖化による蚊媒介性疾患
の感染危険地域の拡大・変化が懸念されているが,この20年でハイランドマラリア現象は頻発している. ハイランドマラリアは地球温暖化によるのだろうか?

ハイランドマラリアが深刻な東アフリカにおけるケニア西部高地で急速に進んでいる変化は人口増加を原因とする森林の減少である. 森林伐採はまず光条件の変化をもたらす点が温度を問題にする地球温暖化とは異なる.森林伐採がマラリア媒介蚊であるガンビエハマダラカ幼虫生存にどのような影響を与えるかを調べるために行った生存実験の結果ガンビエハマダラカ幼虫にとり光が重要であることが示唆された.サハラ以南アフリカに蔓延する最も深刻なマラリア媒介蚊であるガンビエハマダラカグループの2種An. gambiaeとAn. arabiensisの幼虫は日当たりがよく, 持続性のない水溜りなどに多く見られる. 池や湖など持続性の高い水域には低密度でしか存在しない. その理由はわかっていない.

最近の研究結果はハマダラカ幼虫の栄養源として藻類の重要性を報告している. 藻類の発生要因として光は重要であるために, 光が.ガンビエハマダラカグループとも強い相関をもつのであろう.ケニアで行ってきた野外調査の結果, 持続性の低い不確実な環境に大発生する植物プランクトンがあること, このような特殊な植物プランクトンの発生がガンビエハマダラカ類の個体群動態ひいてはマラリアのアウトブレークの鍵であると考えるに至った. ハイランドマラリアは人間活動がガンビエハマダラカの繁殖適地を多数生み出したことが原因と考えられる.