生物トピックはじめました!

生物学コースで行われている教育や研究と関連した生物学のトピックスを紹介します。

バックナンバー: 水田地帯の自然再生

 

分子シャペロン:新しく生まれたポリペプチドの介添え役 (2015年1月19日掲載)

分子シャペロンの働きを説明する図

図. ポリペプチドからタンパク質へ.

我々の体は細胞の集まりである。個々の細胞の中では何千種類ものタンパク質が働いて、生命活動が営まれている。タンパク質は、正しく働くために、特有の立体構造を持つ。
 DNAの遺伝情報を写し取ったmRNAを基に、リボソームがアミノ酸をつなげて、ポリペプチド(図中青線)を合成する。ポリペプチドが正常な立体構造を形成すると、一人前の成熟したタンパク質(図中青丸)として役割を果たすことができる。人に例えると、ポリペプチドは「赤ちゃん」であり、タンパク質は「成人」ということになる。
 細胞内の環境では、合成されたポリペプチドは正常な立体構造を形成できない。分子シャペロン(図中赤)は、悪い環境から合成途上のポリペプチドを保護する役割を担っている。分子シャペロンが離れると、ポリペプチドは立体構造を形成する。いろいろな分子シャペロンがあり、まるで子供の成長を見守る地域社会の大人達のような役目を果たす。(金森 正明)

 

 

水田地帯の自然再生 (2014年12月25日掲載)

写真. 奥能登地域の生物共生型栽培田での生きもの調査の風景

写真. 奥能登地域の生物共生型栽培田での生きもの調査の風景(2014年生物学実習1;A). ゲンゴロウ(B)やトノサマガエル(C)といった絶滅危惧種・希少種が多数確認できました.

水田は、かつて氾濫源湿地を利用していた数かずの動植物に棲み場や採餌場を提供します。水田と、その周囲からは、5,000種以上もの動植物が確認されています。しかし、国内の多くの水田地帯では、過去数十年の間に高齢・過疎化が進み、農業の集約化と管理放棄が進行した結果、生物多様性が著しく低下しました。
 そこで、近年、水田地帯の生物多様性再生と地域経済活性化の両立を目指し、国内各地で、減農薬・減化学肥料栽培等の生物共生型農業(環境保全型農業とも呼ばれる)への取り組みが進められています。生物共生型栽培田では、水田の生物多様性は向上しますが、反面、雑草や害虫管理に多くの労力がかかります。しかし、このように手間隙かけて栽培されたお米は、食の安全にもつながるため、高値で販売できるのです。今後、環境再生と地域再生を持続的に推進していく方策の確立が課題となっています。(西川 潮)